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ホルモン療法①

4/14/2022 9:30:02

がん

今日のポイント:閉経前と閉経後で使うホルモン剤が違う


 今回はホルモン陽性と診断された乳がん患者に使用される薬剤を中心に説明します。

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 ホルモン療法と一口に言っても実際の臨床現場でよく使われるのは次の3種類のタイプの薬剤です。

①抗エストロゲン薬
②LH-RHアゴニスト製剤
③アロマターゼ阻害剤

それぞれの薬剤の特徴を今日は一緒に見ていきましょう。

①抗エストロゲン薬
タモキシフェンに代表されるこの治療薬は、エストロゲンががん細胞のエストロゲン受容体に結合しないよう邪魔することでがん細胞の増殖を抑える薬です。歴史的にも有名な薬で、乳がんのことを調べると検索上位に出てくる薬です。閉経前・閉経後いずれの場合でも使用します。
ただし、代表的な副作用としてはほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、無月経・月経異常、子宮内膜症・子宮体がんのリスク、血液が固まりやすくなるなどが挙げられます。

②LH-RHアゴニスト製剤
LH-RHとは性腺刺激ホルモン放出ホルモンという脳の視床下部という場所から放出されるホルモンのことです。このホルモンにより女性では卵巣からエストロゲンが作られるようになります。このエストロゲンを作り出す流れを止める薬剤がLH-RHアゴニスト製剤です。リュープロレリン、ゴセレリンなどに代表されるこの治療薬は、閉経前の乳がんに有効とされています。代表的な副作用にはホットフラッシュ、頭痛、イライラ、うつ症状などあります。

③アロマターゼ阻害剤
閉経後の女性では、卵巣から乳がん細胞へのエストロゲン供給機能は落ちますが、代わりに副腎という腎臓の上にある組織からアンドロゲンという違う形で、結果的に少量のエストロゲンが供給されるようになります。このアンドロゲンは脂肪組織にあるアロマターゼという酵素の働きによってエストロゲンに変化することがわかっているので、アロマターゼの働きを邪魔する(アロマターゼ阻害剤)ことでアンドロゲン→エストロゲンへ変化させないようにします。主な副作用として、骨粗鬆症、関節のこわばり、めまい、ホットフラッシュなどがあります。

 以上がホルモン療法で主に使われる3種類の薬でした。実際には患者さんの病気の状態や副作用など様々なことを総合的に判断して使用します。薬の副作用がつらい場合は、他の種類の薬に変えることも可能なことがあります。気になることは必ず主治医に相談しましょう。


参考文献: 

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