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急性心筋梗塞、所得格差と生存率

4/30/2023 10:00:04

その他

今日のポイント:高齢の急性心筋梗塞患者では、高所得者層は生存率が良好


高齢の急性心筋梗塞患者における所得格差と生存率について、米国・ハーバード大学医学大学院より研究結果が報告されました。(JAMA誌、2023年4月4日号)

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研究グループは、急性心筋梗塞の高齢患者では治療パターンとその結果(アウトカム)が低所得者層と高所得者層で異なるかを明らかにする目的で6ヵ国(米国、カナダ[オンタリオ州、マニトバ州]、イングランド、オランダ、イスラエル、台湾)において連続横断コホート研究を行いました(米国国立老化研究所[NIA]などの助成を受けた)。
 
対象は、2013~18年に急性心筋梗塞で入院した年齢66歳以上の患者としました。五分位の最富裕層と最貧困層を国別に比較しました。主要アウトカムは30日および1年死亡率とし、副次アウトカムには心臓カテーテル検査や血行再建術の実施率、入院期間、再入院率などが含まれました。
 

  • ST上昇型心筋梗塞(STEMI)による入院患者28万9,376例と、非STEMI(NSTEMI)による入院患者84万3,046例が解析の対象となり、補正済み30日死亡率と1年死亡率はSTEMIおよびNSTEMIの双方とも、台湾を除く5ヵ国では高所得者層で低くなりました。
  • 30日死亡率は、全般的に高所得者層で1~3ポイント低く、たとえばオランダのSTEMIの30日死亡率は、高所得者層が10.2%、低所得者層は13.1%でした(群間差:-2.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-4.1~-1.5)。
  • STEMIの1年死亡率の差は、30日死亡率よりもさらに大きく、イスラエルで差が最も大きくなりました(高所得者層16.2% vs.低所得者層25.3%、群間差:-9.ポイント、95%CI:-16.7~-1.6)。
  • 心臓カテーテル検査と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施率は、すべての国で高所得者層が低所得者層よりも高く、群間差の幅は1~6ポイントでした。たとえば、イングランドのSTEMIにおけるPCIの実施率は、高所得者層が73.6%、低所得者層は67.4%でした(群間差:6.1ポイント、95%CI:1.2~11.0)。
  • STEMIにおける冠動脈バイパス(CABG)術の実施率は、6ヵ国とも高所得者層と低所得者層で同程度でしたが、NSTEMIでは全般的に高所得者層で1~2ポイント高くなりました。たとえば、米国のNSTEMIでは高所得者層が12.5%、低所得者層は11.0%でした(群間差:1.5ポイント、95%CI:1.3~1.8)。
  • 30日以内の再入院率は、全般的に高所得者層で1~3ポイント低く、在院日数も全般的に高所得者層で0.2~0.5日短くなりました。
  • これら結果は皆保険や強固な社会的セーフティネットが整備されている国であっても、所得に基づく格差が存在することを示唆するとされました。

 
以上より、高齢の急性心筋梗塞患者では、高所得者層は低所得者層と比較して、生存率が実質的に良好で、救命のための血行再建術を受ける可能性も高く、入院期間が短く再入院が少ないことが示されました。



参考:Differences in Treatment Patterns and Outcomes of Acute Myocardial Infarction for Low- and High-Income Patients in 6 Countries | Acute Coronary Syndromes | JAMA | JAMA Network

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