“風邪”への抗菌薬処方と医師の年齢
1/14/2025 10:00:04
今日のポイント:高齢院長の単独診療では抗生剤の処方が多い
日本における非細菌性の急性呼吸器感染症に対する抗菌薬の処方と医療機関・医師の関係を調査しました。東京大学大学院医学系研究科からの報告です。(JAMA Network Open誌、2024年10月21日)

電子カルテデータベースを用いて、2022年10月1日~2023年9月30日に非細菌性の急性呼吸器感染症(ICD-10のJ00~J06またはJ20~J22)と診断された外来の成人患者を抽出し、診療所の特性(院長の年齢や性別、患者数、グループ診療か単独診療か)と抗菌薬処方との関連を分析しました。なお、成人のプライマリケアに従事する診療所に焦点を当てるため、耳鼻咽喉科および小児科の診療所と、研究期間中の非細菌性の急性呼吸器感染症の診療が100例未満の診療所は除外しました。
・1,183軒の診療所を受診した97万7,590例(平均年齢:49.7[SD 20.1]歳、女性:56.9%)の非細菌性の急性呼吸器感染症患者を解析しました。
・抗菌薬は17万1,483例(17.5%)に処方され、広域スペクトラム抗菌薬は抗菌薬処方全体の88.3%を占めました。
・最も多く処方されたのはクラリスロマイシン(30.7%)で、レボフロキサシン(12.2%)、セフジトレン(11.2%)、アジスロマイシン(11.1%)、セフカペン(9.2%)、アモキシシリン(7.9%)と続きました。
・高齢の院長の診療所、患者数が多い診療所、単独診療の診療所では、抗菌薬の処方が有意に多くなりました。
【院長の年齢が60歳以上vs.45歳未満】調整オッズ比(aOR):2.14、95%信頼区間(CI):1.56~2.92、p<0.001
【患者数が年間中央値58例/日以上vs.35例/日以下】aOR:1.47、95%CI:1.11~1.96、p=0.02
【グループ診療vs.単独診療】aOR:0.71、95%CI:0.56~0.89、p=0.01
・院長の性別では統計学的に有意な差は認められませんでした。
・広域スペクトラム抗菌薬の処方に限定した解析でも、上記すべての特性で同様の傾向が認められました。
以上より、日本においては、高齢院長の診療所、患者数が多い診療所、単独診療の診療所では抗菌薬を処方する割合が高く、とくに広域スペクトラム抗菌薬を処方する可能性が高かったことが明らかになりました。
参考文献:
Clinic Characteristics and Antibiotic Prescribing for Acute Respiratory Infections in Japan | Infectious Diseases | JAMA Network Open | JAMA Network
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