網膜症と認知症リスク
9/8/2024 10:00:05
今日のポイント:網膜症で認知症リスク増
網膜症と認知症リスクの関係を調査しました。九州大学からの報告です。(Scientific Reports、2024年5月26日)
2007-2008年に久山町の生活習慣病健診を受診した60歳以上の地域住民のうち、認知症がなく、眼底検査のデータが得られた1,709人を対象として認知症の発症の有無を前向きに追跡しました(追跡期間:中央値10.2年、四分位範囲9.3~10.4年)。網膜症の有無は、眼底写真を用いて複数の眼科専門医が診断しました。認知症の発症リスクの算出にはCox比例ハザードモデルを用い、多変量解析により年齢と性別の影響や臨床背景の違いを統計学的に調整しました。
・追跡開始時に網膜症のあった人は174人(平均年齢71.8±7.5歳、男性47.7%)、網膜症のなかった人は1,535人(同71.3±7.6歳、42.9%)でした。
・網膜症のある人はない人と比べ、BMIが高く、血圧が高く、糖尿病の人が多く、脳卒中の既往のある人の割合が高かった一方、総コレステロール値は低いなどの特徴がありました。
・10年間の追跡期間中に374人(男性136人、女性238人)が認知症を発症しました。
・認知症の累積発症率は、網膜症のある人の方が網膜症のない人と比べて有意に高くなりました。
・網膜症のある人では、ない人に比べ認知症の発症リスク(年齢調整後)は1.56倍(95%信頼区間1.15~2.11)有意に高いことが明らかとなりました。
・さらに、影響を及ぼし得る他の臨床背景(教育レベル、収縮期血圧、降圧薬の使用、糖尿病、総コレステロール値、BMI、脳卒中の既往、喫煙、飲酒、運動習慣)の違いを多変量解析にて調整しても、同様の結果が得られました(発症リスク1.64倍〔95%信頼区間1.19~2.25〕)。
・また、高血圧と糖尿病は網膜症のリスク因子であることから、高血圧または糖尿病の有無で分けて検討しました。
・網膜症に高血圧または糖尿病を合併した人では、網膜症がなく高血圧も糖尿病もない人に比べ、認知症の発症リスク(多変量調整後)は1.72倍(95%信頼区間1.18~2.51)有意に高くなりました。
・さらに、網膜症があるが高血圧も糖尿病もない人の認知症の発症リスクも2.44倍(同1.17~5.09)有意に高いことが明らかとなりました。
以上より、網膜症を有する人はそうでない人に比較して、認知症のリスクが高い可能性が示唆されました。
参考文献:Association between retinopathy and risk of dementia in a general Japanese population: the Hisayama Study | Scientific Reports (nature.com)
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