65歳以上の高齢者、NSAIDsの腎機能への影響
10/23/2025 10:00:00
今日のポイント:NSAIDsの定期的な使用は高齢者の慢性腎臓病発症リスクを高め、腎機能の低下を加速
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛管理に広く使用されていますが、とくに高齢者において腎毒性のリスクが懸念されています。そこで、高齢者におけるNSAIDsの長期使用による腎機能への影響について調査しました。韓国・Samsung Medical Centerからの報告です。(Drugs & Aging誌オンライン版、2025年8月6日号)
本研究は、韓国の高齢者コホート(National Health Insurance Service-Senior Cohort:NHIS-SC)の2009~19年のデータを用いた後ろ向きコホート研究です。対象は、ベースライン時に腎機能が正常(推算糸球体濾過量[eGFR]60mL/min/1.73m2以上、血清クレアチニン0.4~1.5mg/dL)であった65歳以上の成人4万1,237例としました。年齢、性別、併存疾患などの背景因子を調整するため、傾向スコアマッチングを行い、NSAIDsの処方日数が1ヵ月以上またはMPR(medication possession ratio)80%以上の604例(NSAIDs使用群)と、NSAIDsの使用歴がない1,208例(対照群)が抽出されました。主要評価項目は、追跡期間中のCKD発症(eGFR 60mL/min/1.73m2未満かつベースラインから10%以上低下)としました。Cox比例ハザードモデルを用いて、NSAIDs使用とCKD発症リスクの関連を評価しました。
・傾向スコアマッチング後のCKD発症率(/1,000人年)はNSAIDs使用群20.18、対照群16.25でした。
・多変量解析において、NSAIDs使用群は対照群と比較してCKD発症リスクが有意に高くなりました(ハザード比[HR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.11~1.93)。
・NSAIDsの種類別にみたサブグループ解析において、COX-1阻害薬(HR:1.53、95%CI:1.16~2.01)、COX-2阻害薬(HR:1.61、95%CI:1.16~2.23)のいずれも、CKD発症リスク上昇と関連していました。
・eGFRの経時的変化を追跡した結果、NSAIDs使用群は追跡2年目以降の腎機能低下が速い傾向にありました。
・末期腎不全(ESRD)の発症は、NSAIDs使用群4例、対照群1例にみられたが、両群間に有意差は認められませんでした。
以上より、NSAIDsの定期的な使用が高齢者の慢性腎臓病発症リスクを高め、腎機能の低下を加速させたことが示唆されました。
参考文献:
Effects of NSAIDs on Early CKD Development: A 10-Year Population-Based Study Using the Korean Senior Cohort | Drugs & Aging
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