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熱中症とコロナ③

8/4/2022 10:00:03

新型コロナ

今日のポイント:2箇所の窓を開け、自然な風の流れる換気を行う
 

引き続き熱中症とコロナに関する内容を取り上げます。

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Q-3 COVID-19 の予防で「密閉」空間にしないようにしながら、熱中症を予防するためには、どのようにエアコンを用いたらよいか?
A-3 職場や教室等、人の集まる屋内では、密閉空間を避けるため、自然な風の流れが生じ
るように2方向の窓を開ける換気を適宜行い、室温を測定しながら、エアコンの温度設定を調節する。
 
【解説】
熱中症および換気の観点から 13論文を検討の対象とした。1999年のシカゴ、2003年のフランスの熱波、およびそれらを含めたメタ分析における多変量解析ではエアコンの使用が有意な予後規定因子であった。また我が国においても同様の傾向が繰り返し報告されていて、エアコンの使用は熱中症予防に有効である。しかし、発生予防としての適切な室温に関する明確なエビデンスは得られなかった。
COVID-19の感染対策として、室内空間を「密閉」にしないようにするために、職場や教室等、人の集まる屋内では、こまめな換気も必要となる。厚生労働省からの提言でも、窓を2方向、数分間全開にして、1時間に2回以上実施することが推奨されている。1方向と2方向の窓を開けたときの換気率と感染リスクを比較した研究では、CO2ガスをトレーサーガスとするトレーサーガス減衰法を用いて換気効率を計算して、感染リスクは、空気感染リスクの簡易・迅速な評価手法であるWells-Rileyモデルを用いて評価したものが報告されている。1方向の窓だけを開放したときよりも2方向の窓を開放した場合の換気効率が良く、2方向の窓を15%, 30%, 100%開放した場合の換気率は、窓を大きく開けた方の換気が大きかった。また、感染リスクについては、30分間の暴露ならば、マスク着用下であれば、2方向の窓を 15%程度開放すれば、感染する確率を 1%以下に抑えられると報告している。しかしながら、この研究は韓国政府の感染対策を肯定的に評価する目的の論文である可能性があることに注意が必要である。
厚生労働省の「熱中症予防に留意した「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」では、換気の方法としては、居室の温度および相対温度を28℃以下、および70%以下に維持できる範囲で、2方向の窓をできるだけ開けて、室内に連続的に空気を通すことが推奨されている。全館空調や業務用エアコンなど、法令に定められた換気量を確保するための機械換気設備や空調設備を有する建物では、法令で定められた環境衛生管理基準値である28℃を超えないよう機械換気設備や空調設備を維持管理すると共に、28℃を超えない範囲で窓やドアを適宜開放することが重要である。
換気することで室内の温度がどの程度上昇するかの明確なエビデンスはなく、室温をこ
まめに測定しながら、エアコンの温度設定を調整していくことが望ましい。熱中症弱者である高齢者を対象とした疫学研究が1編あり、温湿度を可視化することで行動変容が起こりやすく、対象者の60%にエアコンの利用に変化が見られたという報告がある。尚、環境省が推進している「COOLBIZ」は、室温を28℃としても快適に過ごせる軽装や取り組みを促すライフスタイルを提案しているものであり、エアコンの設定を28℃に設定することを推奨するものではない。「エアコンの設定温度」=「室内温度」とはならないことに留意し、暑さ指数(WBGT: Wet Bulb Globe Temperature)を意識してエアコンで温度と湿度を管理すると共に、日差しを遮ることやサーキュレーター、扇風機を併用して快適な環境づくりに努める。また、身体に負荷がかかるような環境では、室温を28℃より低めに設定することも考慮するべきである。 

 
参考:新型コロナウイルス感染症流行下における 熱中症対応の手引き(第 2 版)

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