聴覚障害と心不全リスク
6/10/2025 10:00:00
今日のポイント:聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連
聴覚障害と心不全の関係を調査しました。中国・南方医科大学からの報告です。(『Heart』、2025年4月8日)

長期健康研究プロジェクトであるUKバイオバンクのデータを用いて、研究参加時には心不全のなかった16万4,431人(平均年齢56.7歳、女性54.6%)を対象に、聴力と心不全発症との関連を検討しました。媒介分析により、社会的孤立、精神的苦痛、および、神経症的傾向の影響についても評価しました。参加者の聴力は、雑音下でDigit Triplets Testを用いて測定し、語音聴取閾値(SRT)として定量的に評価しました。SRTは、聴力検査で用いられる指標の一種で、語音を50%の確率で間違わずに聞き取れる信号対雑音比(SNR)を示します。補聴器を使用していない参加者の聴力は、正常(SRT<−5.5dB)、不十分(SRT≧−5.5dB、SRT≦−3.5dB)、低い(SRT>−3.5dB)に分類しました。
・中央値で11.7年に及ぶ追跡期間中に4,449人(2.7%)が心不全を発症していました。
・解析の結果、SRTが1標準偏差上昇するごとに心不全リスクは5%上昇し(調整ハザード比〔aHR〕1.05、95%信頼区間1.02〜1.08)、SRTの上昇に伴い心不全リスクの高まることが明らかになりました。
・また、聴力が正常な参加者と比較した心不全のaHRは、聴力が不十分な人で1.15、聴力が低い参加者で1.28、補聴器を使用している参加者で1.26と、それぞれ有意に高くなりました。
・媒介分析からは、聴力と心不全発症リスクの関連のうち16.9%は精神的苦痛の影響によるものと考えられることが示唆されました。
・社会的孤立と神経症的傾向の媒介効果はそれぞれ3.0%と3.1%でした。
以上より、聴覚障害は心不全リスクの上昇と関連しており、両者の関連には、精神的苦痛が媒介因子として影響している可能性が示唆されました。
参考文献:
Hearing impairment, psychological distress, and incident heart failure: a prospective cohort study | Heart
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