睡眠時無呼吸症候群と自動車事故
3/23/2025 10:00:00
今日のポイント:睡眠時無呼吸症候群は自動車事故につながる
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と自動車事故との関連を調査しました。米トーマス・ジェファーソン大学シドニー・キンメル医科大学からの報告です。(Otolaryngology-Head and Neck Surgery、2025年1月21日)

OSAは睡眠中に何度も呼吸が止まり、熟睡が妨げられる病気のことです。その原因は睡眠中に喉の筋肉が弛緩し、気道が閉塞されることにあるとされます。現在、OSAの治療法として一般的に行われているのが持続陽圧呼吸療法(CPAP)です。この治療では、鼻に装着したマスクから空気を送り込むことによって、気道を確保し、無呼吸が発生しないようにします。また、CPAP以外の治療選択肢として、気道をふさぐ組織を切除する(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)、舌の動きを制御する舌下神経に電気刺激を与える(舌下神経刺激)といった手術療法が挙げられます。
CPAP療法を受けた患者(CPAP患者群;70万2,189人)、手術を受けた患者(手術患者群;1万1,578人)を含む283万4,163人のOSAの患者データが後ろ向きに解析されました。患者データは、病院システムや医師の診療所から匿名化された健康情報を収集する世界的な研究ネットワークである「TriNetX」より抽出しました。患者の転帰評価は、救急外来の受診、入院、診療所受診につながった自動車事故の発生率としました。
・年齢、性別、BMIなどの傾向スコアをマッチングさせた後に、自動車事故の発生率を解析した結果、手術患者群で、CPAP患者群(6.072%)、無治療患者群(4.662%)よりも事故の発生率が低い(3.403%)ことが示されました。
・次にCPAP患者群に対する手術患者群の自動車事故発生率のオッズ比(OR)を解析した結果、手術患者群で45.5%(OR 0.545〔95%信頼区間0.480~0.618〕、P<0.0001)の減少が認められました。
・一方、手術患者群に対する無治療患者群の自動車事故発生率のオッズ比は21.4%(同1.214〔1.060~1.391〕、P=0.0051)増加していました。
・これは、無治療の患者と比べた場合、手術を受けた患者で事故発生率が低下し、CPAP療法よりも手術を受けた患者で、事故発生率が低かったことを示唆しています。
・さらに、自動車事故を経験したOSA患者は経験していない患者と比較し、事故発生後に高血圧、糖尿病、心不全などを併発する確率が有意に高くなることが示唆されました(いずれもP<0.0001)。
以上より、OSAを治療していない人は、自動車事故に巻き込まれる可能性が高いことが明らかになりました。
参考文献:
Risk of Motor Vehicle Accidents in Obstructive Sleep Apnea: Comparative Analysis of CPAP Versus Surgery - Sina - Otolaryngology–Head and Neck Surgery - Wiley Online Library
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