コロナ禍における自殺者数変化
1/17/2022 9:30:02
新型コロナ
今日のポイント:全年齢層の女性、20代と80代以上の男性で自殺増加
コロナ禍における雇用状況の悪化や生活様式の変化などによるメンタルヘルスへの影響も研究が進んでいます。今回は慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 野村周平氏らによる研究結果を紹介します。
2015~2019年における自殺者に関するデータから週ごとの自殺者数の変化を求めました。過去5年間の同じ週の前後3週間自殺死亡者数をもとに、2020年の自殺死亡数の予測値とその両側95%予測区間を算出しました。以下がその結果です。
【女性】
- 2020年1~11月に6,251人が自殺で死亡しました。
- 70代が15.93%と最大、次いで40代で15.50%、50代で15.20%でした。
- 2020年7月下旬以降、毎週ではないものの、20歳未満と80歳以上を除いて断続的に死亡者数の予測値を超えていました。一方で、20歳未満と80歳以上では8月および10月に散発的に予測値を超えることがありました。
- 予測値を超えて最も自殺死亡した割合が高かったのは40代で、上記期間中に予測値以上に自殺死亡した人数は93~223人と計算され、9月28日~10月4日の週が最多でした。(予測値に対する超過死亡比:205.88~247.06%)
- 自殺死亡が減少した期間はほとんど認められず、4~5月に40~50代、80歳以上でごくまれに認めたのみでした。
【男性】
- 2020年1~11月に12,581人が自殺で死亡しました。
- 40代が17.37%と最大、次いで50代で16.79%、70代で13.65%でした。
- 2020年7月末以降、20代と80歳以上で死亡者数の予測値を超え、11月初旬まで継続しました。
- 予測値を超えて最も自殺死亡した割合が高かったのは20代で、上記期間中に予測値以上に自殺死亡した人数は72~274人と計算され、女性と同様に9月28日~10月4日の週が最多でした。(予測値に対する超過死亡比:88.89~118.52%)
- 4~5月に20~60代で死亡者数の減少を認めた期間が存在しました。
以上より、「COVID-19パンデミックの生じた2020年に、日本の自殺率は7月下旬以降、全年齢層の女性、20代と80歳以上の男性で例年以上に増加していた」とまとめています。
尚、これまで日本では長年にわたり、女性より男性、若年者より高齢者の自殺率が高い傾向を示していました。今回の研究で、コロナ禍では男性より女性、高齢者より若年者の自殺による死亡リスク上昇が考えられます。「雇用状況などの悪化などが女性や若年者により強く現れているのではないか」と野村氏らは推測しています。
参考:Suicide by gender and 10-year age groups during the COVID-19 pandemic vs previous five years in Japan: An analysis of national vital statistics - ScienceDirect
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