COVID-19と日本人うつ病リスク
5/16/2023 10:00:06
今日のポイント:うつ病レベルは、パンデミックの初期段階で増大
長期間のCOVID-19パンデミックが日本におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の変化にどのような影響を及ぼしたかを調査した研究を紹介します。北里大学からの報告です。(BMC Psychiatry誌、2023年3月20日号)
2020~22年の間に5回のWebベースの縦断調査を実施しました。抑うつ症状は「こころとからだの質問票(PHQ-9)」、PTSDは「出来事インパクト尺度(IES-R)」、対処戦略は「Brief Coping Orientation to Problems Experienced(Brief COPE)」を用いて評価しました。なお、PHQ-9やIES-Rのスコアが高いほどより多くの症状を有していること、Brief COPEのスコアが高いほど、これらの対処方法の使用頻度が多くなることを示しています。
- 分析対象者は1,366人(平均年齢52.76±15.57歳)でした。
- うつ病のレベルに関しては、2022年のPHQ-9スコアは、2020年および2021年よりも低かくなりました(各々、p<0.01)。
- PTSDのレベルに関しては、女性において2022年のIES-Rスコアは、2021年よりも低くなりました(p<0.001)。
- 男女ともにPHQ-9スコアの増加に影響を及ぼす因子として、若年(男性:β=-0.08、p<0.01、女性:β=-0.13、p<0.01)、自責思考(男性:β=0.12、p<0.01、女性:β=0.18、p<0.01)が特定されました。
- 男性では、抑うつ症状のリスク因子として、仕事がないこと(β=0.09、p=0.004)、経済的影響(β=0.07、p=0.003)が挙げられ、積極的な対処(β=-0.10、p=0.005)は抑うつ症状の軽減に寄与することが示唆されました。
- 女性では、物質(アルコールや薬物など)の使用(β=0.07、p=0.032)、行動の放棄(β=0.10、p=0.006)が抑うつ症状を増大させており、抑うつ症状の軽減に有効な対処方法は認められませんでした。
以上より、うつ病レベルはパンデミックの初期段階で増大し、2022年1月には軽減したと考えられます。男性では、抑うつ症状を軽減するためには、経済的な状態を改善する必要があることが示唆されました。一方、PTSDについては、日本の一般集団において顕著な変化は認められませんでした。
参考:Symptoms and risk factors of depression and PTSD in the prolonged COVID-19 pandemic: a longitudinal survey conducted from 2020 to 2022 in Japan | BMC Psychiatry | Full Text (biomedcentral.com)
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