乳房温存術後の放射線治療②
5/17/2022 9:30:02
がん
今日のポイント:照射中の皮膚炎、照射後の肺炎症状に注意が必要。
前回(乳房温存術後の放射線治療①)の続きの記事です。今回は放射線治療に伴う有害事象(副作用)の部分について解説していきます。
放射線治療の有害事象はその発生時期から大きく2つに分類されます。
①早期有害事象(治療中の1ヶ月~1.5ヶ月程度)
- 倦怠感:放射線が人体に照射されると一部の方に軽い倦怠感が出現します。人によっては「二日酔い」のような症状として自覚されます。たいていの場合は照射開始後の数日から1、2週間程度で症状は改善します。
- 皮膚炎:治療開始すぐはあまり気になりませんが、照射回数が増えるにつれて少しずつ皮膚が変化してきます。保湿剤などで対応しますが、症状が進むと炎症を抑える塗り薬を使用する方もいます。照射終了後より徐々に回復していきます。
- 咽頭炎:全乳房に照射野を設定する際に、一部放射線が喉に照射されてしまう場合に生じます。風邪を引いたときのような喉の違和感が現れます。こちらも照射終了後より改善していきます。
②晩期有害事象(治療後数ヶ月、1年程度)
- 皮膚の線維化:放射線が照射された皮膚の一部に違和感・硬さなどの自覚症状が持続する場合があります。
- 放射線肺臓炎、肺線維症:放射線がごくわずか肺にかかってしまうため、その肺が炎症を起こし、治る過程で一部肺が硬くなることが稀にあります。微熱や咳の原因となることがありますが、割合としてはごく稀です。自覚症状が強い場合には炎症を抑える飲み薬を使用する場合があります。
- 腕の浮腫み:リンパの流れが悪くなることにより、腕の浮腫みが生じる可能性があります。
- 心膜炎:心臓に一部放射線がかかった場合に、心臓への影響の可能性も示唆されています。
- 乳腺機能の低下:照射した乳房の乳腺機能は低下し、照射した側の授乳は難しくなります。
以上のような有害事象が可能性として指摘されています。
尚、放射線治療は局所治療に分類されるため、放射線をかけた部位以外には影響はありません。そのため照射範囲外に何か気になる症状が出た場合は放射線治療の影響でないことがほとんどです。
今回はあくまで全乳房への放射線治療に伴う一般的な有害事象を取り上げました。患者さん一人ひとりで放射線の照射される部位もわずかに異なるため、さらに詳しく気になる方は主治医や放射線治療医に聞いてみるのが良いでしょう。
参考:Q36.乳房手術後の放射線療法の際にみられる副作用はどのようなものですか。 | ガイドライン | 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版 (xsrv.jp)
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