歯周病の進行が動脈硬化の原因に
8/10/2025 10:00:04
今日のポイント:歯周病の進行が動脈硬化と相関あり
アテローム性動脈硬化と歯周病の関係を調査しました。鹿児島大学からの報告です。(Scientific Reports、2025年4月18日)

本研究は長崎県五島市で実施されたフィールド調査で口腔内検査を受けた40歳以上の成人597人のうち、ベースライン時の健康診断と3年後に実施された追跡健康診断の両方のデータ(潜在性動脈硬化症、潜在的交絡因子、口腔内検査)がそろっている222人を最終的な解析対象としました。潜在的なアテローム性動脈硬化の指標として、頸動脈内膜中膜厚(cIMT)が1mm以上、足関節上腕血圧比(ABI)が1.0未満、心臓足首血管指数(CAVI)が8以上の者を、高リスク者と定義しました。歯周病の進行は、歯肉辺縁から歯周ポケット底部までのプロービング ポケット デプス(PPD)と、セメントエナメル境から歯周ポケット底部までのクリニカル アタッチメント レベル(CAL)を測定することで評価しました。
・ベースライン時における参加者の平均年齢は64.5±10.3歳であり、歯周病が進行した対象者58人(26.1%)が含まれました(進行群)。
・歯周病進行群と非進行群のベースライン時点での比較では、性別が男性であること、年齢が高いこと、現存歯数が少ないこと、PPDとCALが深いこと、喫煙者、高血圧、cIMTの厚さ、cIMTが1mm以上の者の割合、およびCAVIの値に有意な差が認められました。
・3年間の追跡調査におけるアテローム性動脈硬化指標(cIMT、ABI、CAVI)の変化を調べたところ、CAVIの値は歯周病進行群(P<0.001)、非進行群(P=0.007)でともに有意に増加していましたが、CAVIが8以上の者の割合は進行群でのみ62.1%から81.0%へ有意に増加していました(P=0.024)。
・次に、年齢と性別を調整した上で、多重ロジスティック回帰分析を実施し、アテローム性動脈硬化(前述の通りcIMT、ABI、CAVIによって定義)に対する歯周病進行のオッズ比(OR)を算出しました。
・その結果、cIMTが1mm以上であった群は歯周病進行のORが有意に高くなりました(OR2.35、95%信頼区間〔CI〕:1.18, 4.70、P<0.05)。
・この有意傾向は、喫煙状況や高血圧などの追加の共変量を調整した後も維持されました。
・また、多重線形回帰分析により、ベースラインにおけるアテローム性動脈硬化指標(cIMT、ABI、CAVI)とPPDおよびCALの変化との相関を検証しました。
・年齢および性別で調整した結果、CAVIはCALの変化と正の相関(β=0.046、95%CI:0.008, 0.083、P=0.017)を示し、ABIはPPDの変化と負の相関(β=-0.667、95%CI:-1.237, -0.097、P=0.022)を示しました。
・この有意傾向は、すべての共変量を調整した後も維持されました。
以上より、日本の地域在住の中高齢者において、歯周病の進行とアテローム性動脈硬化が有意に関連していることが示唆されました。
参考文献:
Longitudinal relationship between atherosclerosis and progression of periodontitis in community-dwelling people in Nagasaki Islands Study | Scientific Reports
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