コロナ感染拡大と夜間営業店

今日のポイント：夜間営業店ではコロナ感染拡大しやすい傾向あり
 

夜間営業店とコロナ感染拡大の関係を調べた研究をお伝えします。東北大学、国立感染症研究所の合同チームからの報告です。（JAMA Network Open 誌、2023 年 2 月 24 日号）

本研究では、ワクチン接種実施以前の 2020 年 1 月 23 日～12 月 5 日の期間に東京都に報告された新型コロナウイルス感染者 4 万 4,054 例を対象として後ろ向き解析を行いました。この期間において、コロナ第 1 波が 2020 年 1 月 14 日～5 月 25 日、第 2 波が 5 月 26日～9 月 30 日、第 3 波の一部が 10 月 1 日～12 月 6 日でした。
対象者の感染経路を、海外、ナイトライフ、飲食店、職場、家庭、医療機関（福祉施設含む）、その他の 7 つの感染環境に分類し、感染環境ごとの症例数およびその後の感染伝播の発生可能性を比較しました。「ナイトライフ」の定義は、レストラン、バー、ナイトクラブ（ホストクラブ、ホステスクラブ含む）、その他の夜間営業の飲食店としました。ナイトライフは、さらに接待を伴う施設と接待を伴わない施設とに分類し、性的サービスを提供する施設は、接待を伴う施設に分類しました。「飲食店」の定義は、ナイトライフの定義を満たさない飲食店としました。

• 全症例数 4 万 4,054 例のうち、2 万 5,241 例（57.3％）は男性患者で、患者の年齢中央値は 36 歳（四分位範囲：26～52）でした。
• 感染経路が確認できたのは 1 万 3,122 例で、家庭 6,768 例（51.6％）、次いで医療機関2,733 例（20.8％）、ナイトライフ 1,174 例（8.9％）でした。
• 症例致死率（CFR）は、医療機関で最も多く（2,733 例中 268 例［9.8％］）、医療機関におけるすべての死亡例は、患者または訪問者の間で発生しました（すなわち、医療従事者の間では発生しませんでした）。
• 6,624 件の感染現場が特定され、1 次感染例から 5 例以上の 2 次感染例（クラスター）が確認された感染現場数は、ナイトライフが 380 件中 72 件（18.9％）、医療機関が 329件中 119 件（36.2％）で、飲食店、職場、家庭、その他の環境よりもとくに多くなりました。
• 特定されたナイトライフ 380 件の中で、接待を伴う施設でクラスターが 193 件中 59 件（30.6％）発生していました。一方、接待を伴わない施設でのクラスターは 187 件中 13件（7.0％）でした。
• ナイトライフの症例は流行の波の初期に多く、家庭と医療機関の症例は後期に多くみられました。第 1 波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭での発症日の中央値よりも 10 日早く、医療機関での発症日の中央値よりも 16 日早くなりましたた。第 2 波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭よりも 35 日、医療機関よりも 40 日早くなりました。
• ナイトライフの症例と比較して、家庭および医療機関の症例は、その後の感染伝播を引き起こす可能性が低く、家庭の調整オッズ比[aOR]：0.03（95％信頼区間[CI]：0.02～0.05）、医療機関の aOR：0.57（95％CI：0.41～0.79）でした。
• 家庭環境は世代間伝播と関連し、非家庭環境は主に同年齢群間の伝播でした。
• 感染現場が特定されていない 3 万 932 例において、ナイトライフの履歴のある症例は、履歴のない症例よりも、非家庭環境へ感染伝播する可能性が高く（aOR：5.30、95％CI：4.64～6.05）、家庭環境へ感染伝播する可能性は低くなりました（aOR：0.85、95％CI：0.75～0.97）。

ナイトライフで確認された COVID-19 症例は、家庭および医療機関での症例よりも、その後に感染伝播する可能性が高いため、とくに流行の初期段階において、ナイトライフの場を対象としたサーベイランスや行動制限の介入を優先させるべきだとしています。



参考：Transmission of COVID-19 in Nightlife, Household, and Health Care Settings in Tokyo, Japan, in 2020 - PMC (nih.gov)