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熱中症とコロナ⑦

8/14/2022 10:00:02

新型コロナ

今日のポイント:コロナ疑いの熱中症患者に対しても冷却法を行ってよい。
 

熱中症とコロナに関する内容は今回で7回目となり、本テーマはいったん最後となります。

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Q-7 COVID-19 の可能性がある熱中症患者の場合、蒸散冷却法を用いて、患者を冷却するべきか?
A-7 通常の感染対策を行ったうえで蒸散冷却法を用いた積極的冷却を行ってもよいが、各
施設で迅速に使用できる冷却法を選択するのが望ましい。 

【解説】
高体温で意識障害を併せ持つ患者は、臨床症状やCT所見からCOVID-19と熱中症を明確に鑑別することは難しく、COVID-19に対する感染対策を行いながら、熱中症の初期診療としての積極的な全身冷却を行わなくてはならない。しかしCOVID-19患者に蒸散冷却法を行った場合、体表から水分が蒸発し発生したエアロゾルの中に、体表面および呼気中に存在するSARS-CoV-2が取り込まれ、広範囲にエアロゾルを拡散する危険性があり、前回の手引きでは原則として蒸散冷却法を使用するべきでないと推奨した。
熱中症患者に対する積極的冷却法には、胃洗浄、膀胱洗浄、血管内冷却、腎代替療法、体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた体内冷却法と、蒸散冷却法、冷水浸漬(cold water 
immersion)、冷水シャワー、氷嚢等での局所冷却、クーリングマットなどの冷却装置を用いた体外冷却法がある。ただし、細胞外液点滴のみの治療は、点滴の液温にかかわらず積極的冷却法には含まない。
日本救急医学会によるHeatstroke STUDYの報告では、積極的冷却法を行わず細胞外液点滴のみで加療した症例が2019年は62.6%だったのに対し、2020年は70.0%だった。また、積極的冷却法のうち蒸散冷却法が用いられた割合は、2019年は77.9%だったが、2020年は61.6%まで減少した。
前回の推奨を踏まえ、表面を40℃に加温した人形に蒸散冷却法を用いた実証実験では、人形表面の冷却効果を認めたが、体表からの水分蒸発に伴うエアロゾルの発生は認めなかった。従って、蒸散冷却法による体表からの水分蒸発に伴うエアロゾルを介した感染のリスクはないが、他の冷却法と同様に、患者がCOVID-19患者であった場合には会話や咳などによる感染のリスクは残存するため、感染対策を継続する必要がある。
一方で、積極的冷却法として、実際にどの冷却法を実施するかについては、蒸散冷却法を特別に推奨するものではなく、各施設で迅速に使用できる冷却法を選択するのが望ましい。急速で効果的な冷却が熱中症において予後を改善すると考えられているが、最適な冷却法については、相互比較の研究を実施するのが難しい。重度の熱中症患者に対し、細胞外液点滴のみで治療した患者と、細胞外液点滴に積極的冷却法を併用した患者の予後を比較した研究では、積極的冷却法の併用が院内死亡率の低下と関連していた。
また、これまでの主な報告をまとめると、熱中症患者では深部体温40.5℃以上が維持さ
れると予後は悪化し、労作性熱中症では毎分0.10℃以上の冷却が予後を改善させると言わ
れている。非労作性熱中症における冷却目標温度や冷却時間を検討した研究報告は見られないが、高体温の時間が長くなることで予後が不良となるため、労作性と同様にできるだけ早期に38℃台になるまで冷却することが望ましい。積極的冷却法のうち冷水浸漬は毎分0.20-0.35℃の冷却速度を達成するとされる。また、導入時の体温が異なるため比較は難しいが、血管内冷却カテーテルが毎時0.8-1.4℃、ゲルパッド法による水冷式体表冷却が毎時1.0-1.2℃と報告されている。
いずれの積極的冷却も過冷却や不整脈出現に留意し、適切なモニタリング下で施行し、各施設で迅速に使用できる冷却法を選択するのが望ましい。 

 
参考:新型コロナウイルス感染症流行下における 熱中症対応の手引き(第 2 版)

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