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熱中症とコロナ②

8/2/2022 10:00:02

新型コロナ

今日のポイント:健常成人においてマスクの着用が熱中症の危険因子となる根拠はない
 

前回に引き続き熱中症とコロナに関する内容を取り上げます。

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Q-2 マスクを着用すると熱中症の発症が多くなるか?
A-2 健常成人においてマスクの着用が熱中症の危険因子となる根拠はない。

【解説】
6 名の若年成人被験者を対象に、室温 28℃の環境下で、立位保持、歩行、ランニングを各20 分行い、マスク非着用時(コントロール)、サージカルマスク着用時、スポーツマスク着用時において温度監視カプセル内服により深部体温を測定した研究では、運動強度を上げるといずれの群においても深部体温や呼吸数、脱水の指標となる pleth variability index(PVI)は上昇し、SpO2 は低下したが、3 群間に有意差はなかった。8 名の若年成人被験者を対象に、室温 40℃・湿度 20%の環境下で、KN95 マスク非着用時(コントロール)と着用時で、ベースラインと 45 分間の軽作業後の運動認知能力、生理的指標(直腸温、皮膚温、顔面温)、知覚的指標(熱不快感、呼吸困難)を評価した研究では、KN95 マスク着用により軽作業後に呼吸困難を訴える被験者が 36%増加したが、運動認知能力や生理的指標、熱不快感はKN95 マスク着用による影響を受けなかった。なお、KN95 マスクは中国の規格 GB2626-2006 に準じて作られたマスクで、フィルタの性能的には N95 マスクと同等の基準をクリアしたとされている。
A-1(前回記事)で示したように、マスクの着用が体温に及ぼす影響はないと考えられ、呼吸困難感に影響を及ぼすことはあっても、マスクの着用そのものが運動強度増加時の熱中症の危険因子となる根拠はない。しかし、これらの研究はいずれも健常若年成人を対象としたものであり、高齢者や小児においてマスクの着用が熱中症の危険因子となるか否かの報告はない。しかしながら、熱中症に対する年齢と日中最高気温の影響について検討した報告によると、65 歳以上の高齢者や 7~17 歳の若年者は、18~64 歳の成人と比較して熱中症になる日中最高気温が低い傾向があった。また、乳幼児は成人と比較し、呼吸筋が未発達で、解剖学的死腔が大きいため、呼吸不全のリスクが高くなることも知られている。
既往に肺疾患がある場合は、N95 マスクを着用した状態での有酸素運動は、呼気終末炭酸ガス濃度の上昇と関連すること報告されており、熱中症の発症との関連の報告はないが、マスクの着用に注意する必要がある。
マスク着用にかかわらず暑熱環境における運動が深部体温に及ぼす影響は大きい。マスクを着用しなかったからといっても、暑熱環境においては熱中症のリスクが十分に軽減されるわけではないと解釈して、特に暑熱環境において運動をする場合や高齢者や小児、肺疾患がある傷病者は、エアコンや水分補給などの熱中症対策は継続するべきである。

 
参考:新型コロナウイルス感染症流行下における 熱中症対応の手引き(第 2 版)

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