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高齢者の座位時間と認知症リスク

10/5/2023 10:00:05

認知症

今日のポイント:高齢者は1日10時間以上の座位行動で認知症リスク増


高齢者の座位行動時間と認知症のリスクの関連を調べた研究を紹介します。米国・南カリフォルニア大学からの報告です。(JAMA誌、2023年9月12日号)

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前向きに収集されたデータの後ろ向き研究で、UK Biobank(イングランド、スコットランド、ウェールズに居住する成人の地域住民を登録)のデータが用いられました。加速度計を装着するサブスタディ(2013年2月~2015年12月)に参加し、利き手の手首に加速度計(AX3、Axivity製)を1日24時間、7日間装着することに同意した成人10万3,684人のうち、加速度計を装着した時点で認知症の診断を受けておらず、少なくとも3日間の有効な装着時間(1日16時間以上)があり、加速度計装着時に60歳以上であった4万9,841人について解析しました。追跡調査は、イングランドでは2021年9月まで、スコットランドでは2021年7月まで、ウェールズでは2018年2月まで行われました。
 
手首に装着した加速度計の1週間のデータを、機械学習に基づいて解析しました。主要解析では、1日の平均座位行動時間(覚醒時において30秒間の時間幅が2回以上連続し座位行動として分類されたものと定義、睡眠は座位行動時間に含まれない)を、副次解析では1日の平均座位時間、1日の最長座位時間、1日の平均座位回数を求め、これらと入院患者の病院記録および死亡登録のデータから得られた認知症診断との関連を、線形および3次スプライン関数を用いたCox比例ハザードモデルにより評価しました。

  • 計4万9,841人の背景は、平均(±SD)年齢67.19±4.29歳、女性54.7%でした。
  • 平均追跡期間6.72±0.95年の間に、414人が認知症と診断されました。
  • さまざまな共変量を調整した完全調整モデルにおいて、1日の平均座位行動時間と認知症発症との間に有意な非線形の関連が認められました。
  • 1日の平均座位行動時間の中央値9.27時間/日に対する認知症のハザード比(HR)は、10時間/日で1.08(95%信頼区間[CI]:1.04~1.12、p<0.001)、12時間/日で1.63(1.35~1.97、p<0.001)、15時間/日で3.21(2.05~5.04、p<0.001)でした。
  • また、1,000人年当たりの認知症発症頻度は、9.27時間/日で7.49(95%CI:7.48~7.49)、10時間/日で8.06(7.76~8.36)、12時間/日で12.00(10.00~14.36)、15時間/日で22.74(14.92~34.11)でした。
  • 1日の平均座位時間(HR:1.53、95%CI:1.03~2.27、p=0.04、平均値0.48時間から1時間増加すると認知症症例が1,000人年当たり0.65[95%CI:0.04~1.57]増加)、および1日の最大座位時間(1.15、1.02~1.31、p=0.02、平均値1.95時間から1時間増加すると認知症症例が1,000人年当たり0.19[95%CI:0.02~0.38]増加)は、認知症発症リスクの増加と有意に関連していましたが、1日の平均座位回数は認知症発症リスクの増加とは関連していませんでした(HR:1.00、95%CI:0.99~1.01、p=0.89)。
  • 感度分析(加速度計装着日から4年後を追跡調査開始日としたランドマーク解析)では、座位行動時間を調整後、1日の平均座位時間および1日の最大座位時間は、認知症発症と有意な関連は認められませんでした。

 
以上より、60歳以上の高齢者において、加速度計で評価した座位行動時間が長いほど全認知症発症率が有意に高いことがわかりました。


参考:Sedentary Behavior and Incident Dementia Among Older Adults | Dementia and Cognitive Impairment | JAMA | JAMA Network

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