HER2ってなに？
4/19/2022 9:30:03
今日のポイント：HER2とは細胞の増殖に関わるタンパク質
前回は乳がんと女性ホルモンの関係について一緒に考えました。今回はHER2(ハーツ―)という乳がんを知る上で非常に大切な用語について一緒に見ていきましょう。
HER2とは、もともとHuman Epidermal growth factor Receptor type2（ヒト上皮細胞増殖因子受容体2）の略で、細胞の増殖を調節するタンパク質です。HER2が異常増殖すると、本来必要ない場面でも次々に細胞が増殖してしまい、結果的に乳がん細胞の増殖につながります。
以前は、HER2陽性の乳がん患者さんは比較的予後が悪いと言われていました。しかしながら、HER2に特異的に結合してがん細胞の異常増殖を防ぐ【トラスツズマブ(ハーセプチン®)】の開発を契機に、特に早期乳がんでは化学療法＋トラスツズマブ併用療法により劇的に治療効果および予後は改善しました。
一般的な抗がん剤よりは副作用が少ないと言われているトラスツズマブ(ハーセプチン®)ですが、抗がん剤には見られにくい特有の副作用があります。具体的には、発熱、悪寒戦慄、心毒性(心不全)などが挙げられます。発熱、悪寒に関しては初回投与時に最も多く認めますが、以降はあまり大きな問題になることはありません。また心毒性(心不全)については、万が一(数%以下)生じたとしてもトラスツズマブ(ハーセプチン®)の中止および対症療法によって改善することがほとんどです。尚、トラスツズマブ(ハーセプチン®)使用中は心エコー検査などで定期的に心機能をチェックします。
また現在ではトラスツズマブ(ハーセプチン®)に一部修正を加えたような薬剤も開発されており、さらなる治療効果の改善が期待されています。ただし、日本で保険適応となっていないような薬剤も中には含まれているため、安全性も含めて今後追加検討する必要がありそうです。気になる薬剤があれば主治医に相談してみると良いでしょう。
今回はHER2の勉強を一緒にしました。乳がんを知る上では、ホルモン療法だけでなくHER2関連の治療についても絶対に必要な知識ですので、今後もひとつずつ一緒に勉強していきましょうね。
参考：
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