睡眠と動脈硬化
3/16/2023 10:00:03
今日のポイント:睡眠不足や不規則な睡眠は動脈硬化リスクを上げる
睡眠と動脈硬化の関係を調べた研究をご紹介します。米国・ヴァンダービルト大学からの報告です。(Journal of the American Heart Association誌、2023年2月21日号)
本研究はコミュニティベースの多民族研究(MESA:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、睡眠時間や睡眠の規則性について、アクティグラフィ※(活動量測定検査)を7日間手首に装着した記録を評価し、無症候性のアテローム性動脈硬化との関連性を横断的に調査しました。
※腕時計型の加速度センサーで、腕や足首に装着することで活動/休止リズムサイクルを記録するもの。睡眠/覚醒アルゴリズムを記録できる。
2010~2013年に記録された2,032例(平均年齢±標準偏差[SD]:68.6±9.2歳[範囲:45~84歳]、女性:53.6%)のデータを用いました。評価項目に用いたマーカーは、冠動脈カルシウム、頸動脈プラークの有無、頸動脈内膜-中膜の厚さ、および足首-上腕指数としました。睡眠の規則性は睡眠時間と就寝タイミングで、個々の7日分のSDを定量化しました。解析には相対リスク回帰モデルを使用し、有病率と95%信頼区間[CI]を計算しました。
- 全体として、7日間を通してさまざまな睡眠を取った(たとえば、ある夜は睡眠時間が短く、ある夜は睡眠時間が長かった)参加者は、毎晩ほぼ同じ睡眠時間だった参加者よりも、アテローム性動脈硬化を発症する可能性が高くなりました。
- 参加者の約38%では睡眠時間が90分以上変化し、18%では120分以上も変化していました。
- 睡眠が不規則な人の特徴は、白人以外の人種では「現喫煙者の可能性が高い」「平均年収が低い」「勤務がシフト制もしくは無職の可能性が高い」「BMIが高い」傾向でした。
- 調整後、より規則的な睡眠時間(SD≦60分)の参加者と比較したところ、睡眠時間の不規則性が大きい(SD>120分)参加者は、冠動脈カルシウム負荷が高く(SD>300、有病率:1.33、95%[CI]:1.03~1.71) 、足首上腕指数が異常値でした(SD<0.9、有病率:1.75、95%[CI]:1.03~2.95)。
- より規則的な就寝タイミングの参加者(SD≦30分)と比較したところ、就寝時間が不規則な参加者(SD>90分)は、冠動脈のカルシウム負荷が高い可能性が強くなりました (有病率:1.39、95%[CI]:1.07~1.82)。
- 関連性は、心血管疾患の危険因子、平均睡眠時間、閉塞性睡眠時無呼吸、中途覚醒を調整後も持続しました。
- 睡眠の不規則性、とくに睡眠時間の長さのばらつきはアテローム性動脈硬化のいくつかの無症候性マーカーと関連していました。
以上のように、睡眠不足や不規則な睡眠であるとアテローム性動脈硬化の発症リスクを高めることが示唆されました。
参考:Sleep Irregularity and Subclinical Markers of Cardiovascular Disease: The Multi‐Ethnic Study of Atherosclerosis | Journal of the American Heart Association (ahajournals.org)
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