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高齢者の記憶力と車の運転

9/10/2023 10:00:04

認知症

今日のポイント:主観的に記憶力の低下を自覚している高齢者は自動車衝突事故やヒヤリハットの確率が有意に高い
 

主観的な記憶力の心配(subjective memory concerns、以下「SMC」)や、SMCに加えて歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome、以下「MCR」)を有する人と自動車衝突事故やヒヤリハットを起こす確率の関係を調査しました。国立長寿医療研究センターからの報告です。(JAMA Network誌、2023年8月25日号)

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2015~18年に実施された同センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)のデータを用い、愛知県在住の65歳以上の高齢者の衝突事故やヒヤリハットの経験を調査しました。運転しない人、認知障害がある人(ミニメンタルステート検査21点未満)、認知症の病歴のある人などは除外しました。SMCは、老年期うつ病評価尺度(GDS)などを数種類の方法を用いて評価し、歩行速度低下は年齢や性別の平均値より-1.0SD以下としました。
 
参加者は、過去2年間の衝突事故と前年のヒヤリハットを対面で聴取され、(1)SMCも歩行速度低下も有さない群(対照群)、(2)SMCのみを有する群(SMC群)、(3)歩行速度低下のみを有する群(歩行速度低下群)、(4)MCRを有する群(MCR群)の4群に分けられました。ロジスティック回帰モデルを用いて、衝突事故またはヒヤリハットのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を求めた。データは2023年2~3月に解析されました。

  • 参加者1万2,475人の平均年齢は72.6(SD 5.2)歳で、56.9%が男性でした。
  • 対照群は3,856人(30.9%)、SMC群は6,889人(55.2%)、歩行速度低下群は557人(4.5%)、MCR群は1,173人(9.4%)でした。
  • SMC群とMCR群では、衝突事故およびヒヤリハットの割合が他の群よりも多くなりました(調整標準化残差>1.96、p<0.001)。
  • ロジスティック回帰分析の結果、対照群と比べて、SMC群とMCR群では衝突事故が有意に多くなりました(【SMC群】補正後OR:1.48、95%CI:1.27~1.72、p<0.001、【MCR群】補正後OR:1.73、95%CI:1.39~2.16、p<0.001)。
  • 同様に、SMC群とMCR群ではヒヤリハットも有意に多くなりました(【SMC群】補正後OR:2.07、95%CI:1.91~2.25、p<0.001、【MCR群】補正後OR:2.13、95%CI:1.85~2.45、p<0.001)。
  • MCR評価を客観的認知障害で層別化した結果、客観的認知障害の有無に関係なくSMC群とMCR群で有意に衝突事故とヒヤリハットが増加していました。
  • これらの結果は、高齢ドライバーの過失割合が半分以下の衝突事故を除外しても同様でした。

 
以上より、客観的認知障害の有無にかかわらず、主観的な記憶力の心配や、歩行速度低下を有する運動認知リスク症候群を有する人では自動車衝突事故やヒヤリハットを経験する確率が有意に高いことが明らかになりました。

 
参考:Motoric Cognitive Risk Syndrome and Traffic Incidents in Older Drivers in Japan - PMC (nih.gov)

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