サル痘、発症前から感染か
11/29/2022 10:00:03
その他
今日のポイント:サル痘、症状出現前から感染の可能性
英国健康安全保障庁(UKHSA)において、イギリスでのサル痘の感染動態を調べる目的で接触追跡研究を実施しました。イギリスでは、サル痘の流行は2022年7月9日時点でピークとなりその後に低下しましたが、発症間隔は潜伏期間より短い場合が一般的であったことから、症状発現前のサル痘症例からの感染伝播があったことが示唆されています。(BMJ誌、2022年11月2日)
UKHSAの症例質問票からデータを用いて、サル痘症例の接触追跡研究を実施しました。対象は、2022年5月6日~8月1日の期間にPCR検査でサル痘と確定診断された症例2,746例で、接触追跡により症例と接触者のペアを特定しました。
- 主要評価項目は、サル痘感染症の潜伏期間と発症間隔(1次感染者の症状発現日と2次接触者の症状発現日の間隔)で、2つのベイジアンモデル(区間打ち切り補正[ICC]、区間打ち切り右側切り捨て補正[ICRTC])を用いて推定しました。
- サル痘ウイルス感染が確認されUKHSAに報告された日ごとの症例数の増加率について、一般化加法モデルを用いて推定しました。
- 2,746例の平均年齢は37.8歳で、95%がゲイ・バイセクシャル・男性間性交渉者であると報告でした(1,160/1,213例)。
- 平均潜伏期間はICCモデルで7.6日(95%信用区間[CrI]:6.5~9.9)、ICRTCモデルで7.8日(6.6~9.2)、平均発症間隔はそれぞれ8.0日(95%CrI:6.5~9.8)、9.5日(7.4~12.3)と推定されました。
- 発症間隔と潜伏期間の連携データのある症例13例のうち、10例で発症前の感染が記録されていました。
- 両モデルとも平均発症間隔は潜伏期間より長くなりましたが、短期発症間隔の頻度が短期潜伏期間よりも多く認められ、発症間隔の25パーセンタイル値および中央値は潜伏期間の同値より短くなりました。
- ICCとICRTCモデルにおいて、25パーセンタイル値は推定1.8日(95%CrI:1.5~1.8)~1.6日(1.4~1.6)短く、中央値は推定1.6日(1.5~1.7)~0.8日(0.3~1.2)短くなりました。
以上のように、サル痘はその発症前から感染の可能性があったと言えます。
参考:Transmission dynamics of monkeypox in the United Kingdom: contact tracing study | The BMJ
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