アルコールと膵がん
7/8/2025 10:00:04
今日のポイント:アルコール摂取と膵がんリスクにわずかな正の関連
世界保健機関(WHO)のInternational Agency for Research on Cancer(IARC)より、30コホートの前向き研究の大規模コンソーシアムにおいて、アルコール摂取と膵がんリスクとの関連を検討しました。(PLOS Medicine誌、2025年5月20日)

本研究における集団ベースの個人レベルのデータは、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の4大陸にわたる30のコホートからプールしました。1980~2013年に、がんを発症していない249万4,432人(女性62%、ヨーロッパ系84%、飲酒者70%、喫煙歴なし47%)を登録(年齢中央値57歳)、1万67例が膵がんを発症しました。喫煙歴、糖尿病の有無、BMI、身長、教育、人種・民族、身体活動で調整した年齢・性別による層別Cox比例ハザードモデルにおいて、アルコール摂取量のカテゴリーと10g/日増加による膵がんのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定しました。
・アルコール摂取量は膵がんリスクと正の相関を示し、1日0.1~5g未満と比べた1日30g以上60g未満および1日60g以上でのHR(95%CI)はそれぞれ1.12(1.03~1.21)および1.32(1.18~1.47)でした。
・男女別では、女性で1日15g以上、男性で1日30g以上の場合に関連が明らかになりました。
・アルコール摂取量が10g/日増加すると、膵がんリスクは全体で3%増加し(HR:1.03、95%CI:1.02~1.04、p<0.001)、喫煙経験者では3%増加しました(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06、p=0.006)が、性別(異質性:0.274)または喫煙状況(異質性:0.624)による異質性は示されませんでした。
・地域別では、ヨーロッパ/オーストラリア(10g/日増加によるHR:1.03、95%CI:1.00~1.05、p=0.042)および北米(HR:1.03、95%CI:1.02~1.05、p<0.001)では関連が認められましたが、アジア(HR:1.00、95%CI:0.96~1.03、p=0.800、異質性:0.003)では関連は認められませんでした。
・アルコールの種類別では、ビール(10g/日増加によるHR:1.02、95%CI:1.00~1.04、p=0.015)とスピリッツ/リキュール(95%CI:1.03~1.06、p<0.001)は膵がんリスクとの正の関連が認められましたが、ワイン(HR:1.00、95%CI:0.98~1.03、p=0.827)については認められませんでした。
以上より、性別および喫煙状況にかかわらず、アルコール摂取と膵がんリスクにわずかな正の関連が認められました。
参考文献:
Alcohol intake and pancreatic cancer risk: An analysis from 30 prospective studies across Asia, Australia, Europe, and North America | PLOS Medicine
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